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第五塩
   投稿者 ・ 半熟チョモランマ




小学5年生の頃、
林間学校と言う行事で長野県にある蓼科(たてしな)へ行った時の話です。

僕が泊まった先は
外観は木造建築で、
いかにも時代を感じさせる古ぼけた木材の色に包まれ、
内観は、ロビーから下り階段を下りると
長い直線の通路に長方形の部屋が並んでいるという構造でした。

そして各部屋には8人程度の人数づつが泊まり、
僕の部屋はロビーへ続く階段から一番奥の部屋でした。


林間学校初日の夜。
初の友人達と共同の外泊だったせいか、
昼間のハイキングの疲れも忘れ部屋で遊び続けました。

枕投げやトランプ。
とにかくふざけ合っていたのを覚えています。

消灯時間を過ぎてもその勢いはとどまらず、
気付けば深夜の2時を過ぎていました。

暗闇の中、僕を含め起きているのは4人ほど。
2時を過ぎていることに気付いた僕達は、
なぜか眠れない事が不安になってきました。
そこで出た結論が、
今思うと実に可愛い結論だったと思うのですが

「先生に『眠れないんです』と相談しに行こう。」

でした。

意を決した4人は部屋と同じく闇に包まれた廊下を歩き、
遠く先の階段から漏れる裸電球の明かりを目指します。

無言でロビーへ向かう4人。

しかし到着すると、ロビーには誰もいなくなっていました。
先生達は入浴中のようでした。
ロビーの奥の方からワイワイと声が聞こえてきます。

仕方なく来た道を戻ることに。
そんななか、4人のうちの一人、Kが言いました。

「他の部屋で起きている人いるかな?」

確かに他にも起きている人がいたら心強い。
というわけで、僕達は他の部屋の中に片っ端から声をかけてみることにしました。

ここの旅館の部屋の入り口にはドアや戸は無く、
のれんが掛かっているだけです。

そののれんから僕とKは顔をくぐらせ、順々に声をかけていました。

しかし、誰も起きているはずが無く、
残るは僕達の部屋の隣の女部屋でした。

例の如く、半ば誰かが起きているかもという期待も薄れてきているものの
とりあえず僕達はのれんから頭をくぐらせ、
誰が寝ているかもわからない闇の中に声をかけました。

「誰か起きてる?」

…当然の如く誰の返事もありません。

そこで僕達は自分の部屋に戻るところです。
ですがその部屋には当時、僕の好きだった女の子がいて
どこにいるのかKと一緒に探していました。

しかし、眼を凝らして暗闇の中を見てみても誰が誰だかもわかりません。

ふとその時、
部屋の両脇に横付けされた木の棚に眼が行きました。
その棚には部屋の子達のリュックやらが置かれているのですが…



何かが動いてる…!



どう表現したらいいのかわかりません。

ただ、窓もカーテンも閉まった暗闇の中
棚の上で『何か』が凄い速さでうごめいていることだけがわかるんです。
なのにガサガサといったような音が全くしない。


僕は恐怖心よりも好奇心が勝ち
眼を凝らして見たのですが、
一体なにが動いているのか
僕が見ている『黒い何か』が一体何なのか分からない。

…数分、数秒、どれくらいソレを見ていたのか覚えていません。
すると、一緒にのれんから顔をくぐらせていたKが何も言わないまま
突然自分の部屋に足早に戻ってしまいました。

慌てて僕と残された他の子達も自分の部屋に戻りました。

Kは布団に潜り込んでいました。

「早く寝よう」

小声で言うKの突然の行動も気にせず、皆布団を被りました。
Kの態度に違和感を感じていたのは僕だけだったのかもしれません。

アレはなんだったんだろう?
Kもアレを見たのか?

そんな事を考えながらも、気付いたら僕も眠っていました。

翌日、翌々日と林間学校のスケジュールは滞りなく進められ、
二泊三日の旅行は終わりを告げました。


その後、
初日の夜の事をKには何も聞くことが出来ませんでした。
そして、小学6年になると同時に僕は転校し、
Kも引っ越した後に私立の中学へ進学したそうです。

今となってはKとは連絡を取ることが出来ません。

でも、今でもKに聞きたくなることがあります。




K、あの時お前は何を見たんだ?






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